木の章 鹿


3 鹿に何を学ぶ

 
 昔の仙人(道士・気功の修行者)は、鹿を精力の強い動物とみなしていました。鹿は多産系です。いつも疲れを知らず、ぴょんぴょん飛びはねる鹿を見て、「私も、あの鹿のように元気になりたいものだ」と考えたのでしょう。

 そして、鹿のどこにその秘訣が隠されているか、鹿の生態を仔細に観察しました。
 
 その結果、鹿は四六時中、絶えず、尻尾を動かしているのだということを発見しました。鹿の尻尾は、まるで車のテールランプのようです。尻尾の動きでいつも、周囲の仲間にメッセージを送っているのです。仙人は、鹿の精力の強さは、どうやら、その動きにあるようだと考えました。そして、その鹿のしぐさを真似たわけです。
 
 鹿は「督脈」の通りが良い動物であるとされています。督脈とは、「気」の流れるルート、つまり、経絡(註参照)で、尾骨の先から背骨にそって後頭部を通り、上顎部まで通っています。

 鹿の性腺に蓄えられた精力は、この督脈にそって上昇し、頭部に生えている角に流れるのだと考えました。したがって鹿の角には強い性エネルギーが蓄えられており、それが精力剤になると考えたのです。「鹿茸(ろくじょう)」という漢方薬がそれです。

 しかし、人間には尻尾はありません。ではどうやって、鹿に学べばいいのでしょうか?

註:経絡

 経絡とは、「気」の流れるルートで、経脈・絡脈を略した名称です。

 経絡には、五(六)臓六腑につながる「十二正経」と「奇経八脈」と呼ばれる八本のルートがあります。
 
 体の後ろを通る「督脈」は体の前を通る「任脈」と同様、その「奇経八脈」に分類される経絡です。
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